向かいのお兄さん
第52章 わだかまり
「やーぁ、美咲ちゃん、おはよ」
開かない目を開けようと、必死になっているのがわかる
『すいません…なんか、もう泊まり込みになっちゃって』
「大丈夫。
俺、今日は仕事休みだし~」
雅也さんは、申し訳なさそうにするあたしの頭をポンポンと叩いた
――――――
――――――
『本当にありがとうございました』
「いや、いーよ。
それより次は、…火曜だっけ?」
雅也さんは車の窓から顔を出し、そう聞いてきた
『はい。
バレンタインデーは木曜なんで』
「最終的に何作るのかも、決めなきゃダメだしねー」
わざとらしく考え込んだ後、雅也さんはこっちに笑顔を向けた
「じゃあとりあえず、またね」
『はい、よろしくお願いします』
窓が閉まり、雅也さんはヒラヒラと手を振った
車も走り出し、あたしはそれを見送った
「美咲…?」
『え?』
後ろから、声が聞こえた