向かいのお兄さん
第52章 わだかまり
『あ…直也』
「…」
すっごく不機嫌な顔して
直也はあたしを見ていた
『おはよう』
お菓子作りのことを気づかれてはいけないと思って
あたしは普通に笑顔を向けた
…つもりだったけれど、直也はそれに応えてはくれなかった
「さっきのって…あいつか?」
"あいつ"とは
きっと雅也さんのことだ
『あいつ?』
察していても
あたしはわざとそう返した
「雅也だよ」
『ああ…うん』
これはもう、嘘を言っても仕方ないように思えた
どうせ直也は、車から顔を出している雅也さんを見たんだろうし…