向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
どさっと二人して腰掛ける
あたしは疲れ果てたように壁にもたれ掛かったけれど、直也はずっと地面を見つめていた
「ごめんな」
『…』
いつもの直也の声だった
怒鳴り声とか、イライラした声じゃなくて
あたしが大好きな、落ち着いた直也の声だった
「全然構ってやれなくて、ごめんな」
直也の背中が小さく見える
抱きしめたくなった
でも
我慢した
『ううん…忙しいなら、しょうがないし…』
本当は
しょうがなくないよ
『会えない時間が愛を育むって言うしさっ…』
そんなの絶対
嘘っぱちだ
『あたしも、わがままばっかでごめんね』
会えなかったら不安になる
触れてもらえなきゃ枯れそうになる
直也がずっとそばにいてくれるって思えなくなるのが、一番、怖いんだよ
「無理してる…」
ハッとした
直也があたしの目を見ていてくれた
あたしの目を
誰かの目じゃなくて、あたしだけの目を見て、寂しそうな笑顔作って、言ってくれた