向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
『幸子さんのことが1番大切だって…そんなこと当たり前なのに…
でもあたしを1番好きでいてほしぃんです…
ごめんなさい…こんなこと言ってごめ…なさ…』
「美咲さん」
あたしは袖で涙を拭い、幸子さんの指先へと目をやった
その細くも綺麗な指は、すっと窓の方を示す。
『…その花って…』
小さな花が咲いていた
小瓶に立てられたそれは、外から入ってくる光に温められているようだった
「そうよ?
スズランの花」
そのとき思い出した
直也の顔を
「美咲さんが選んでくれたんでしょ?
とっても可愛い花よ?」
『直也が…あたしに好きな花を聞いた理由って…』
「ええそうよ。
あの子こういうことは無頓着だから、お見舞いの花の選び方も…本当適当よね」
幸子さんは口に手を当ててクスクス笑った
『な、何でこんなこと…あぃつ、バカだ…』
「ええ本当に。
あの子はおバカさんよね」
お見舞いの為なら、そう言えば良かったのに…
何でよりによってあたしが言った花を使うわけ?
…
菊って言わなくて良かった…