向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
「あの子ねぇ…」
幸子さんは小さく笑ってみせた
けれどその笑顔はどこか寂しげで、あたしは目を背けることができない
「いつもいつも、あなたの話しかしないのよ?」
『え?』
なんだか胸が
熱くなった
『どういう…』
「本当よ、毎日毎日あなたの話ばかり。
元気だとか泣き虫だとか変人だとか…」
『変人…て…』
直也には言われたくないぞ
「美咲さんは私に嫉妬してるって言ったけれど、私だって美咲さんに嫉妬しているのよ?」
寂しげな表情が、一段と増した
でも
『そんなはずないです。絶対…』
嘘なんでしょ?
あたしの話しかしないってのは
あたしの機嫌取るための嘘なんでしょ?
「美咲さん…」
ごめんなさい
性格悪くてごめんなさい
いい子ぶってごめんなさい
もし幸子さんが言ってることが本当であったとしても、なんでだろ
今はなんだか
信じることができない
「あのね、美咲さん…これも本当の話なんだけど…」