向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
『…なんですか?』
「あのね…」
と
言いかけたところで幸子さんは口をつぐんだ
『…』
あたしは幸子さんを見つめ続ける
早くその言いかけた言葉の先を知りたくて
急かすように焦らすように見つめ続けた
「えっと…」
『はい…』
けれどなかなか、言い出さない
「私の口から言っていいのかわからないんだけれど…」
そしてまたまごつかせる
「あの子、ふと言ったのよ?」
『何をですか…?』
「だから…えと…」
そろそろあたしも
イライラしてきたぞ
『すいません、あたし帰りますね。
体は大事にしてください』
一応笑って言った
笑って言って、体の向きを変えた
それと同時に、幸子さんはベッドから身を乗り出すようにしてあたしに言った
「あの子ね、言ってたの!信じてあげてほしいの…!美咲さん、あの子…」
「おいババア!!!!」
病室の扉が開いた
勢いよく開けたのは、直也だった
…廊下で待ってたのか…
「あら、直也…」
「そんなペラペラしゃべるなよ」
『あ、ちょ…』
直也はあたしの腕を掴んで
さっさと病室を出た