向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
『痛い…』
「…」
『痛いよ』
「…」
『痛いっつってんだろ!!』
病院を出ると同時に、あたしは直也の手を振り払った
「何だよ」
『何だよじゃない!!』
大声は、病棟の壁に反響した
途端に周りから多くの視線を感じたものだから、あたしは赤面した
『な…何かさ…』
自分でほっぺを引っ掴んだ
本音を直也にぶちまけたくなくて口を塞ぎたいのに
どこかその手は躊躇するんだ
『すっごい…イライラするの…何で?』
「そんなの知らない」
『だって直也…自分のお母さんが相手だと、めちゃくちゃ口が悪いんだもん…普段そんな言葉遣いしないでしょ…?』
「それで?」
『あと…何か、直也とお母さん、どこかですれ違ってるみたいで…それが嫌なの』
「それだけ?」
『それだけって…』
違う