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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 留花が咎めるように言うと、成洙は鼻を鳴らした。
「おうよ。お前がそんなふしだらな娘じゃないことは、俺はよく知ってる。だとしたら、良いか、留花、お前はあの両班に上手い具合に騙されてるんだよ。大方、屋敷に迎えてやるとか何とか言われて、その気になったんだろうが、そんな夢のようなことが起こるはずもないってえことは、お前もよくよく承知してるだろう? どうせ、ろくに仕事もせずに昼日中から女に現(うつつ)を抜かす放蕩息子に違いねえ。あの男は止めておけ。あんな男と一緒にいたって、お前が不幸になるだけだ」
「もう、良い。私のことは放っておいて」
 留花が成洙には構わず行き過ぎようとするのに、成洙は〝待て〟と肩に手をかけた。
「お前には余計なお節介だろうが、俺はお前を亡くなった娘のように思ってきた。俺がもしお前の父親なら、絶対にお前をあんな奴の好きなようにはさせねえ」

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