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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

 留花は烈しい勢いでまくしたてた。
「―判りました。あなたさまがそれをお望みなら、私は最後まで物判りの良い女を演じて見せましょう。ですから、もうこれ以上言い訳はなさらず、どうぞ一刻も早くここをお立ち去り下さい。もしうかうかと長居をなされば、私の気が変わって喚き始めるかもしれませんよ? 行かないで、私を棄てないでと愁嘆場を繰り広げられたら、困るのは愃さまの方でしょう?」
 愃が堪りかねたように言った。
「留花、何故、私の話を聞こうとしない? 私は今でもそなたを愛しいと思っている」
「今更、この期に及んで言い訳は結構です。旦那(ナー)さま(リ)、どうせ棄てるおつもりの花ならば、これ以上の情けは無用です。どのようなお優しい言葉をかけて頂いても、真心のこもっていなければ、ただ空しいだけ。互いの心の傷をいたずらに深くするだけです」

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