
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
そこには、国王英祖の第二王子であり世子の座にあった寛允君(李愃)が謀反を企て、その罪によって父である英祖から死を賜ったという内容がごく形式的、簡潔に記されていた。
「馬鹿な―、そんな馬鹿なこと、あるはずがない」
留花は夢中で繰り返した。傍らの商人―先刻の男が一人で何事かを呟く留花を胡散臭そうに見ているのにも気付かない。
その時、別の方からまた小声が聞こえてきた。
「ええっ、でも、まさか流石にそれはないだろう」
「いや、それがどうも真実(ほんとう)のことらしいよ。実はねえ、姪が王宮に女官として上がっていてさ、その姪がほんのちょっと前、宿下がりしてきたときに、私しゃア、この耳でちゃんと聞いたよ。国王殿下が世子邸下を―」
「馬鹿な―、そんな馬鹿なこと、あるはずがない」
留花は夢中で繰り返した。傍らの商人―先刻の男が一人で何事かを呟く留花を胡散臭そうに見ているのにも気付かない。
その時、別の方からまた小声が聞こえてきた。
「ええっ、でも、まさか流石にそれはないだろう」
「いや、それがどうも真実(ほんとう)のことらしいよ。実はねえ、姪が王宮に女官として上がっていてさ、その姪がほんのちょっと前、宿下がりしてきたときに、私しゃア、この耳でちゃんと聞いたよ。国王殿下が世子邸下を―」
