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手紙~天国のあなたへ~

第7章 終章・エピローグ

 が、愃の隠し子の存在を知りながら、敢えてその生命まで奪おうとせず、そっとしておいたのは、英祖が自ら殺した息子愃の心根を思いやったからなのかもしれない。惺は英祖の孫に当たるのだ。 
「ほら、あっちを見て」
 促された方を見やると、大きな雪だるま二つと小さな雪だるまが表に鎮座している。
「まあ、本当。凄いわ」
 留花が褒めてやると、息子は寒さで紅くなった鼻をこすりながら自慢げに胸を張る。
 ああ、この眼許、口許。何て、あの方に似ているのだろう。意思の強そうな濃い眉、何にでも好奇心を見せてきらきらと輝く黒い瞳。あの方が子どもの頃も、きっとこの子のように利かん気で、好奇心を一杯にした大きな瞳を輝かせていたに違いない。
「いちばん大きいのが天国にいるお父さん、その次のがお母さん、右側のちっちゃいのは僕さ。どうだい、なかなかだろ?」
「そうね。天国にいるお父さんもきっと歓ぶわよ」

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