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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

 邪魔をしては悪いような気がして黙っていると、ふいに男が眼を開く。
「この家の隣近所には隙間なく家が集まっているのに、こうしていると、随分と静かなものだ。雪が物音を吸い取り、すべてのものの気配を消し去ってしまうのだろうか」
「雪が降り続けた翌朝なんて、しんと世界全体が静まり返って、いつも暮らしている場所が何だか違う自分の知らないところみたいに思えます」
 留花の相槌に、男が嬉しげに頷いた。
「確かに、そなたの申すとおりだな」
 熱い白湯を勧めると、男は更に顔をほころばせて、さも美味そうに―彼が普段、屋敷で呑んでいるであろう上等のお茶を飲んでいるように―ひと口毎に味わいながら呑んでいる。
「そなたについては色々と訊ね回ったが、そういえば、肝心なことを訊くのを忘れていた」
 ふと男が思い出したように言う。

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