
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
留花は訥々と語った。
「私は両親に連れられて市に買い物に出かけていました。綺麗な髪飾りを父に買って貰って、両親にそれぞれ手を引いて貰って、今から思えば、夢のような愉しい時間でした。その帰り道、道端に女郎花が群がって咲いていたんです。母が〝見て、あなた、女郎花よ、綺麗ね〟そう父に言って、父も笑顔で〝本当だ、綺麗だよ〟って」
どうしてか、涙が溢れ出し、留花は最後まで話せなかった。
「今でもつい昨日のことのように鮮やかに憶えています。黄色の小さな花を一杯つけた女郎花と愉しそうに笑うお父さんとお母さん。その二人に両側から手を繋いで貰って、躍るように辿った家路。あれが私にとって、ただ一つの幸せな記憶」
普段はけして人前では涙は見せないのに、この男の前だと不思議と温かな涙が溢れてくる。
「私は両親に連れられて市に買い物に出かけていました。綺麗な髪飾りを父に買って貰って、両親にそれぞれ手を引いて貰って、今から思えば、夢のような愉しい時間でした。その帰り道、道端に女郎花が群がって咲いていたんです。母が〝見て、あなた、女郎花よ、綺麗ね〟そう父に言って、父も笑顔で〝本当だ、綺麗だよ〟って」
どうしてか、涙が溢れ出し、留花は最後まで話せなかった。
「今でもつい昨日のことのように鮮やかに憶えています。黄色の小さな花を一杯つけた女郎花と愉しそうに笑うお父さんとお母さん。その二人に両側から手を繋いで貰って、躍るように辿った家路。あれが私にとって、ただ一つの幸せな記憶」
普段はけして人前では涙は見せないのに、この男の前だと不思議と温かな涙が溢れてくる。
