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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

 祖母の身体は掛け布団越しにも頼りないほど小さかった。その祖母の身体に身を預け、留花は突っ伏して泣いた。
 愃は上物の毛織りのチョッキを惜しげもなく置いていった。横たわった香順には掛け布団の上にまだあのチョッキがかけられたままだ。
 必然的に愃のチョッキに頬を押し当てて泣くことになる。愃の残り香なのか、ほのかに漂ってくる清涼な香の匂いが余計に留花の哀しみを誘った。
「忘れるんじゃ、留花。そなたには、ふさわしき男がごまんとおる。生まれながらに悲劇の星を背負い込んだ男ではなく、明るい前途のある男とめぐり逢うまで辛抱するのだ」
 留花は祖母の言葉を聞きながら、思った。
 いいえ、私はけして諦めはしない。あの方をこの手で守って見せる。いえ、たとえ共に不幸に巻き込まれることになったとしても、私はあの方の側にいたいのだもの。

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