
手紙~天国のあなたへ~
第4章 野辺送り
野辺送り
供えた線香の白い煙がゆらゆらと揺れている。そのゆくえを虚ろな眼で追いながら、留花は緩慢な動作で立ち上がった。
先刻から、表の扉がカタカタと耳障りな音を立てている。今夜は殊の外、風も強かった。大方は吹き過ぎる風のせいだろうとは判っていたけれど、それでも、用心するに越したことはない。
たった一人の身内であった祖母が逝って、はや数日が経った。香順が眠るように息を引き取ったのは、あの謎の男―愃が家に来てから二日後の朝のことであった。正確には、香順がいつ亡くなったのかは判らない。
祖母はある朝、隣で枕を並べて眠る留花がめざめたときには、既に呼吸が止まっていた。大急ぎで近くの医者を呼んできたが、亡くなった香順とさして歳の変わらない老医者はただ首を振るばかりであった。
供えた線香の白い煙がゆらゆらと揺れている。そのゆくえを虚ろな眼で追いながら、留花は緩慢な動作で立ち上がった。
先刻から、表の扉がカタカタと耳障りな音を立てている。今夜は殊の外、風も強かった。大方は吹き過ぎる風のせいだろうとは判っていたけれど、それでも、用心するに越したことはない。
たった一人の身内であった祖母が逝って、はや数日が経った。香順が眠るように息を引き取ったのは、あの謎の男―愃が家に来てから二日後の朝のことであった。正確には、香順がいつ亡くなったのかは判らない。
祖母はある朝、隣で枕を並べて眠る留花がめざめたときには、既に呼吸が止まっていた。大急ぎで近くの医者を呼んできたが、亡くなった香順とさして歳の変わらない老医者はただ首を振るばかりであった。
