刑事とJK
第97章 根城の裏で笑う者
「犯人は、まず身内の人間だ」
そう斉藤が言い出したのは、手にしていた缶が空になってからだった。
「刑事…ってことですか?」
「いや、警察や医療班の人間も含めてだ」
署内にある全ての出入口には、監視カメラが備え付けてある。
外部から怪しい人間が入ってくれば、すぐにわかるだろう。
「そういった不審者の報告は何も受けてねぇ。
なら、内部の人間が黒だって簡単に絞れる」
「…お尻を見てたのは…?」
斉藤は空き缶を、壁でコツコツと叩き始めた。
その手がぴたりと止まると、急に鋭く目が光る。
「埃だ」
「…ホコリ?」
「ああ。
床に這いつくばって見てみりゃ、何かと見つかるもんでな」
空き缶を捨てると、腕を組んで壁にもたれかかる。
「遺体の手前にあったデスク…あの下に、たっくさんの埃が溜まっていた。
でも一部、そこに誰かが座ったように埃が取れてたんだ」
「偶然じゃないんですか?」
「確かに偶然かもしれねぇ。
けど、そこに犯人が身を隠してたって可能性も、少しはあるわけだ」
すると嘉山は、その目を大きく開いた。
「も、もしかして、僕が遺体を発見したとき、犯人は手前のデスクの下に隠れてたってことですか!?」
「そうも考えられるんじゃねぇか?」
すっかりおびえてしまった様子の嘉山を、斉藤はカラカラと笑った。