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願わくば、いつまでもこのままで

第4章 遊園地デート



「はぁはぁ……あっいた!陽君!!」



俺の後ろ

お化け屋敷の出口からは

荒い息遣いで走ってきた比奈ちゃんが出てきた。




俺はすぐに比奈ちゃんから視線を外した。


少しの
申し訳なさと恥ずかしさと情けなさで……



見ていなくても
聞こえてくる荒い息遣いから
比奈ちゃんが肩で息をしていることが想像できたし

視界の端に
内股になった膝に手をついているのが見えた。




息が整ったのか

落ち着いた声で比奈ちゃんは言った。


「陽君、ごめんね」


えっ……?

俺は反射的に顔を上げた。


比奈ちゃんの瞳は
真っ直ぐに俺を見ていた。


「陽君お化け屋敷苦手だったんだね
行ってくれればよかったのにって思ったけど
男の子はそんなこと恥ずかしくて言えないよね
本当、ごめんね」


なんで……比奈ちゃんが謝ってるんだ

俺が謝らなきゃいけないんだ

俺が

俺は

なんで好きな子に謝らせているんだよ



「……違うよ、比奈ちゃん。それは違うんだよ
俺が謝るべきなんだよ!
男のくせにあんなビクビク怖がって…
比奈ちゃん置いて逃げ出して
比奈ちゃんは謝んないでよ
……ごめん、比奈ちゃん」




俺はつい必至になって言った。



俺……情けねぇ…

せっかく比奈ちゃんと遊園地来たのに

情けねぇとこ見せてばっかじゃん

……兄貴は、もっと頼りがいのある
かっこいい男なのにさ……



比奈ちゃんは黙って俺の言葉を聞いた後

ゆっくりと
優しい笑みを浮かべた。


「そんなに、必至になって謝らなくても……
…涙目になってる。そんなに、怖かった?」



そう言いながら
俺の眼にたまった涙を拭った。


俺は何も言えないまま
比奈ちゃんの笑顔を見ていた。

まるで母性を連想させるような
そんな笑みをただ見ていた。



「ほら陽君、笑って?元気出して
まだまだいっぱい2人で遊ぼ」



そう言って比奈ちゃんは俺の手を取り歩き出した。








それから夕方まで
2人で遊園地をまわって遊んで楽しんだ。

夜までいれたら、それこそ嬉しかったけど
さすがにそれは無理だった。
家に帰って夕食を作らなきゃいけない、と。


家庭が

ある身だからね




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