All Arounder
第17章 Shadow Threaten
「ま、待て!!」
「お嬢様ー!!」
後ろからの声は、三人を追ってくる
「どーやって撒くんだ!?」
「えっとなぁ、…走る!!」
アスファルトで靴が跳ね返る感触
正面から後ろへ吹き抜ける風
自分の手を引く、二人の手…
全部が
心地好かった
『…///』
今少しだけ笑ったことは
秘密だけど
――――――
使用人たちの姿が見えなくなり、三人は小さな公園で足を止めた
「ぶっはー、疲れたぁ」
井上は汗を拭った
井上だけではない
大志も姫も、この蒸し暑い中を走りつづけ、汗でぐっしょりだった
「…にしても、まさか姫の家の使用人たちと出くわすとはなー…」
『うん…びっくりした』
井上は地面に腰を下ろすと、姫を見上げた
「なー、姫ちゃんって何で屋敷に帰りたがらねーの?」
『…』
姫は黙って井上の隣に座った
大志も続けてその横に座る
『もうあの家には…何もないから』