All Arounder
第26章 Encounter
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「マスター、酒くれ」
「態度でかいぞ」
井上はマスターから酒の入ったグラスをもらい、クイッと飲んだ
All Arounderを始めてもう何年経つだろう
ずっと一人でこの仕事を続けてきた
「退斗…All Arounderも一人じゃ、何かと都合の悪いことが出てくるだろ…」
「今さら何言ってんだよ、今までだって俺一人でやってきたじゃねーか」
「…まあ、そうだけど」
「マスターが美味い酒出してくれてたら、それで充分だっつーの」
ケラケラと笑うが、正直一人は大変だった
依頼がいきなり複数来る日や、難度の高い依頼なんかは、一人で動くっていうのは厳しいものがあり
自分みたいな、この仕事でしっかり動ける人間が誰かいるなら
その誰かと一緒に
All Arounderをやっていくのもありかなー…とは考えていた
しかし…そんな都合のよい人間なんてなかなかいない
身体能力に優れていても、盗みや暴力に抵抗があったり
極悪非道であっても、鈍臭かったり…何よりそんな奴は、自分と馬が合わないだろうし
…そういうこともあって、All Arounderに誰かをスカウトするようなことは一切しなかった