All Arounder
第28章 My Little Girl
『黒羽?へんな名前』
ピクッと眉間にシワが寄る
いけないいけない、こんな子供の言うことを真に受けてちゃあ…
「お嬢様の、お名前は?」
そういや、まだ聞いていなかった
すると少女は、目線を下に落として言った
『…だれにも言わないでね?』
「なぜです?」
『お父さまが、言うなって言うの』
…おかしな家だ
「かしこまりました」
少女は俺の服の袖を引っ張った
だから俺は、身を屈めて耳を近づける
か細い声でコソコソと話すことも下手くそで
もしその場に他の人間がいたら、余裕で聞かれていただろう
『…ヒメっていうの///』
「西浦…姫様?」
『呼んじゃだめっ』
お嬢様はギュッと俺の足にしがみついた
名前を呼んではいけない理由が全くわからないが…
「申し訳ありません、お嬢様」
驚いたことに
この時から俺が唯一、使用人の内でお嬢様の名前を知っている人間になったのだ
「なぜ名前を隠せとおっしゃられるのですか」
『わからない。でも…ないしょだよ?教えちゃったこと』
お嬢様は小さな小指をそっと出してきた
「…かしこまりました」
自分の小指をそれと結ぶと、
いかにお嬢様が幼かったのかがありありとわかった