
All Arounder
第52章 Young Girl
「酔ってんのか?
交番まで送っとこうか?」
「やだ〜酔ってませんよ斉藤さ〜ん」
女は手首から先をパタパタと動かし、斉藤の目をじっと見た
「あたし、有利香(ユリカ)っていうんですぅ。
斉藤さん呼んで下さいよ、ゆ〜り〜か♪」
「はいはい」
「え〜ひどい」
斉藤が軽くあしらったので、有利香は頬を膨らませた
しかしすぐに、パッと笑顔になる
「斉藤さ〜ん、恩返しさせて下さ〜い」
「はあ?」
「何でもしますよぉ?
よかったらご奉仕しましょうかぁ?」
「あいにく妻子持ちでな、結構だ」
斉藤がそう言い帰っていこうとするので、有利香はまた腕を掴んで引き止めた
「冗談ですって〜。
でも斉藤さん、奥さんいるのか…そりゃこれだけカッコ良かったらいるよねー…」
「…あんたも早く帰ったらどうだ?」
「あ〜、あたし人を探してるんですよぉ」
「人探し?」
斉藤が尋ねると、有利香はニコニコしたまま頷いた
「はい、あ、でもそんなことより、恩返しさせてくださ〜い。
あたしこう見えて義理堅いんですよ〜?」
「だから…もう"ありがとう"だけで十分だ」
「そんな〜…嫌いな人とかいないんですか?
よかったらブッ殺してあげましょうか〜?」
「!!」
斉藤の表情が変わったので、途端に有利香は苦笑いした
「これも冗談ですよ〜、本気にしないで下さいな〜」
「…わかってら…」
すると有利香は斉藤から手を離し、そしてまたもとの笑顔に戻った
「いつか恩返しさせてくださいね、斉藤さん」
「…」
返す言葉に戸惑っている間に、有利香は暗がりの中へと消えていった
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