All Arounder
第53章 Bring Back
「わ〜お、なんだかドキドキしますね」
有利香は椅子に座ると、そのままカタカタと揺らした
「カタカタすんな、落ち着かねぇ」
「まぁまぁ大志、それくらい許してやれよ」
苛立つ大志を、珍しく井上がなだめる
「で、有利香ちゃん。
さっそく依頼の内容に入るか」
「はいっ」
有利香は行儀よく膝に手を置いた
「あたし、言った通りある人を探してるんです」
「"赤井久狼"だっけ?」
「はい。
実はですね、パパにお届けものを頼まれた訳ですよ。
その人に渡してこいって」
「お届けもの?」
すると有利香は、先ほど見せた写真を再び机に置いた
「この短刀が、お届けものです」
「…」
ソードブレイカー
その名のとおり、剣を壊すことの出来る剣としてその名が付けられた
その峰は凸凹になっていて、敵の剣をそこにかませて折る
「そんな代物を、今持ってるってことか」
「はい、そういうことになりますね〜」
なぜそのような物を届けるのか…といった私情にまでは、まだ口出ししない
今はその赤井久狼という人物に関する手がかりが必要だ
「赤井久狼について知っていることは?」
「いやぁ、それが全然」
有利香は頭をふらふらと動かした
「その名前と、この街にいるはずってことと、ソードブレイカーの写真さえ見せれば本人が分かるだろう…としか言われてないんですよ〜」