All Arounder
第53章 Bring Back
「斉藤ジュニアさんには攻撃したくないんですけどね〜」
吹っ飛ばされた井上を、唖然として見ていられたのも束の間だった
胴体を目掛けて突っ込んでくる竹刀に対して
大志も椅子でガードした
瞬時にいなして衝撃を和らげる
「ただの馬鹿力かと思ってたら…」
仕込んであるじゃねぇか
上等そうなものがよ…
大志は、竹刀の隙間からチラついた光を見逃さなかった
ガードに使っていた椅子を持ち直し、
今度は有利香にぶつけていく
『ひゃっ』
姫は、有利香の頭に椅子が直撃したのかと思い
思わず目を瞑ったが
動じることなく有利香は竹刀で大志の一撃を防いでいた
「これならどうだ!」
大志もすかさず2撃目を食らわせにかかる
「ありゃ、すぐバレちゃいましたかねぇ」
3撃目、4撃目…と重ねていくうちに、
竹刀の1番にヒビが入った
パキンっ
ヒビの入った部分は砕け落ち、
中からはすらりと長い刀が覗いていた
「いいんですかぁ大志さん?
竹刀が割れちゃったら、本物が飛び出しちゃいますよ?」
「そいつで斬られたらまずいだろうな」
有利香の竹刀は、日本刀に竹を巻いたものだったのだ
「道理で無駄に一撃が重いわけだ…」
中に鉄仕込んである代物…
軽々振り回すなんざ、間違いなくやべぇだろ
井上はさっき食らった一撃の重みを、
手のひらの痺れから感じていた