All Arounder
第54章 You Asked For It
「まぁ、誰にも話したことなかったからなぁ」
はははと声を出して、マスターは笑っていた
自分にも酒をつくり、ひと口喉に通す
「本当にマスターは、有利香の親父さんを…殺したのか?」
真相を突き止めたくて仕方がなかった
「ああ。まぁな」
「なんで…」
「言っておくけど!
マスターが人殺しだったからって、俺はなーんにも気にしねーからな!」
井上は、大志の言葉をさえぎって叫んだ
「いやオレだって気にしねぇよ!」
なぜか大志も意地を張って叫ぶ
『あたしも!』
「うちも!」
「お前ら真似すんなよ!」
「ははは…ほんと、お前たちバカだなぁ」
困った顔しながら、マスターは笑っていた
そしてふと、置いてあるソードブレイカーに視線を落とす
「そうだなぁ、何から話そうか…
もう何十年も前の話だ。
俺がこの酒場を開くずーっとずーっと前…」
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空は、暗かった
目の前は、煙や塵でいつも不鮮明だった
常に銃声や叫び声が聞こえて
常に焼け焦げるニオイと生温い血のニオイが嗅覚を刺激していた
俺は、毎日そんな戦場を走り回っていた