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All Arounder

第54章 You Asked For It



眼前には敵


背後から近づくこちらには気づいていない




刃物を握りなおし、一瞬で敵の喉元を掻っ切る



「What…!?」





首から噴き出る鮮血に驚きながら、
もう一人の敵は俺に銃剣を向ける


その相手の刃先をソードブレイカーで絡めとり
敵の懐に飛び込んだころにはすでにもう一本の短刀が敵の首に達していた



「…!!」



声を出すこともできないまま、敵は地面に倒れ込んだ









「…」







「やっぱ久狼はすごいなぁ!」




「淳司か」



声のする方に目をやると、1人の男が立っていた





「お?もうちょっと嬉しそうにしたらいいじゃねぇか」


「油売ってないで仕事しろよ」


顔に飛び散った返り血を乱暴に拭った







「ははは、人殺しするの、いやじゃん?」





「…じゃあ何でこんなとこ来たんだよ…」








俺は、傭兵だった


いろんな国や組織に金で雇われては、各地を転々としていた




戦争があるたびに、顔を出し

人を殺し

金をもらう


そんな生活を送っていた






ーーーーーーーー



「昼間は大活躍だったな!
…久狼は何で傭兵やってるんだ?」


野営地で火を焚き、淳司は温めた缶詰をフーフーと冷ました

それを美味しそうに頬張る






「親は日本人だったけど…アメリカで生まれ育った。

ただそんな両親が、俺が幼いころに交通事故で死んでからは、これくらいしか食いつないでいく術がなかったからな」



俺も温まった缶詰をかき混ぜながら話した




「ほう、世の中、久狼みたいに苦労してるやつが山ほどいるんだな」

「おい」

「ぎゃは、海外暮らしのお前にはなかなか味わえないシャレだろっ!」



淳司と出会ったのは、この戦争が初めてだった


お互いに日本人の傭兵が珍しかったので、すぐに顔と名前を覚えたのだった


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