All Arounder
第54章 You Asked For It
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マスターは話の途中で大きく息を吐いた
「マスター、傭兵やってたんや…」
「ああ…このソードブレイカーも、雇い主のひとりにもらったものなんだ
血がにじむほど握ったよ」
一体どれだけの修羅場をくぐってきたんだろう
大志も井上も、その計り知れないマスターの過去に身震いした
「結局…そのブリギャルの親父…淳司だったか?
そいつはその時に?」
「いや、淳司とはその戦争が終わった後は、別れたよ。
金欲しさに戦争に来てみたけど、人殺しには腰が引けてしまったとさ」
今でもよく思い出せる
あいつの切なそうな表情…
「その時は、日本に帰るよ。とだけ聞いたんだ…」
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「日本に帰るのか?」
「ああ、たんまり金がもらえるって聞いて飛びついた今回だったけど…やっぱきついわ!
人殺しとか、無理!」
「その割には…」
戦争に勝ったと、知らせが届いた
そのときの淳司の体には、べったりと血が付いていた
「これは、もう仕方ない。
ヤらなきゃ殺される。
そんな状況…まぁ、自分から飛び込んだんだけどよぉ」
「刀の使い方も、慣れてそうだったけど」
「へへ、ジャパニーズ剣術だ」
淳司は手に持っていた刀を高く掲げた
「帰る場所があるなら、いいじゃないか」
皮肉など、一切なかった
ただ単純に、うらやましかった
「ないよ、別に」
淳司は刃先を見つめていた
「ただ日本で生まれたってだけだ。
帰った後は、また何とかしなくちゃならない」
「嘘つけよ」
「ほんとだって。
じゃあお前も来いよ、久狼。
一緒に起業でもしてやろうぜ」
「はは…」
そんな人生も、無しじゃないだろうなぁ…
「それは、やめておく」
淳司はこっちを振り向いた
「ははは!
まぁ断られるとは思ってたけど!」
「悪いな」
「いや、
次会うときはもっとリラックスできる場所で、酒でもくみ交わそう」
屈託のない笑顔が、印象的だった