
All Arounder
第54章 You Asked For It
淳司と自分の酒を用意し、
ふたりはカウンターに並んで座った
「まずは偶然の再会に、乾杯!」
「乾杯」
グラスを当てると、同じタイミングで一口飲む
「旨いな、好みの割り加減だ」
「それは良かった。
それにしても、どうしてここに?」
「いやぁ、本当にただの偶然だったんだ。
娘の練習試合がこの近くであって…」
「娘!?」
つい、グラスを置く勢いが強くなってしまった
大きい音を立てたことに、すまんと呟く
「ははは、日本に帰ってきてから出会ったんだ、妻とは…
まぁでも、娘を産んだ後に死んじまったけど…」
「それは…お気の毒に…」
「いや、もうとっくに立ち直ってるよ!
そうそう、で、娘の剣道の練習試合に付き添って来たんだけど、なにせ待ち時間が長くてさぁ」
淳司はグラスをゆすった
「で、適当に散策してたら雨がふってきたもんで。
雨宿りついでに入った店がここだったわけよ」
「おいおい、そんな偶然あるかよ」
「驚いたのはこっちだ!
あれだけバッサバッサと人を斬ってたやつが、日本に来てバーを開いてるなんてよ!」
「おい…あんまりでかい声で言うなよ…」
共に過ごした時間は短かったものの、
淳司は変わらず、俺の知っている淳司だった
「それで…どうだ日本は。
いつから来てたんだよ?」
「淳司と別れてから、1年ほどで来たよ」
「すぐじゃないか!
苦労しただろ、久狼(笑)」
「だからそれやめろって」
なんと居心地のいい空間だろうか
過去の自分を知っている人間とは、大事な存在だな…
