
All Arounder
第54章 You Asked For It
どれくらい他愛もない話をしただろうか
「それにしても…あ~…
やっぱり俺は、あの時久狼も一緒に日本に来てほしかったなぁ」
「なんだよまた」
「それがさぁ、俺日本に帰ってから、やっぱり最初は上手くいかなくてさぁ…」
「仕事が?恋愛が?」
「仕事!
表に出せるような内容じゃねぇから何とも言えないんだけど…その時組んでた相方が、またとーんでもねぇボンクラなんだわ!」
「淳司、類は友を呼ぶんだぞ?」
「ん?じゃあ久狼もボンクラってことだけど、大丈夫?」
お調子者
それでも、いいやつだった
話を聞いていると、淳司は日本でしばらく
何でも屋稼業で食いつないでいたそうだ
新しい仕事が入るたびに新しい相棒と組み、
そのたびに相手とのソリの合わなさに落胆していたんだとか
「だからさ、きっとお前と一緒だったら、いろーんなことが上手くいってたんじゃないかって、すげー思うんだよ」
ふと、退斗の顔が思い浮かんだ
「俺の知り合いにも、何でも屋やってるやついるよ」
「本当か!?
もっと早く教えてくれよ~。
まぁそのときはそいつより、久狼と組んでただろうけどね!」
娘が生まれる前には、何でも屋をやめたそうだ
今では道場を開いて、子供から大人まで剣道を教えているんだと
「コーチしてるなら娘さんの試合ちゃんと見に行けよ」
「いや~大丈夫、うちの子やたら強いから」
「…なんかさぁ…」
俺には、誰にも打ち明けたことのない不安があった
「淳司は、悪夢を見たりするか?」
「んー?
急になんだよ」
「いや、よくある話だよ、
自分が殺した相手の亡霊が出てくるというか…」
「あ、無理無理、お化けとか無理なんだわ」
そこまで首を横に振られたら、
それ以上口に出せないじゃないか…
