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All Arounder

第54章 You Asked For It




「七香ちゃん」



「はい、どうしました?」




テーブルを拭く七香の後ろ姿に声をかける




「明日は、店閉めようと思うんだ」




「え、そうなんですかっ」



七香は驚いた顔をこちらへ向けた

思わず作業していた手がとまる



「何か、用事でもできたんですか?」



「え、いや、用事は別にないんだけど…」




明日は七香ちゃんの誕生日だから

好きなことしておいで。


という魂胆だったが、


店を閉めるとまで言わなければ
七香は意地でもバイトに来るだろうと思ったのだ



「…」


七香は口を横一文字に引っ張って、
何かを思案した



「そういうことなら」


「うんうん」



「明日は、マスターと退斗と三人で、公園にお出かけしませんか?」



「うん?」



お出かけ?




「いやいや、また急に…」


「最近、近くに新しく整備された公園ができたんですよ。
芝生も広くって、気になってたんです」



「いやいや、せっかくの誕生日なんだからもっと自分のやりたいこと…」

「ほらやっぱり!」


しまった、と口を閉じた



「マスターはそういうところ、すごく気を遣うんだから…」


「き、気なんて遣ってないない…」


「でもお言葉には甘えさせてもらって」



七香は手を後ろで組み

体を小さく傾けた




「せっかくの誕生日は、マスターと退斗と三人で過ごしたいです」



ここまで言われたら

断る理由もなかった



「…寂しがり屋さんなのか?」



…ぽんぽん


「あ、また子ども扱いしてる…!!!」


「いや、ただ単にかわいいなぁと」



「かっ…かわ…!?///
今日はもう上がりますから!!!」


「え」




七香は布巾を乱暴に持つと、スタスタと更衣室に歩いて行ってしまった




「…まだテーブル拭いてる途中なんじゃないの…?」





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