
All Arounder
第54章 You Asked For It
良く晴れた日だった
公園につくと、遠くから子供の楽しそうな声が聞こえる
「本当に広い場所だね~」
「でしょ!
私張り切ってバトミントンもボールもブルーシートも持ってきちゃったんです!」
「そのリュックがパンパンなのは、そういうことね…」
退斗はというと、無言でその公園の広大さに目を輝かせていた
かと思うと急に
「マスター!」
「お、どうした?」
「あの木のところまで競争しよう!」
「退斗、あんまりマスターを無理させちゃだめだよ」
「いや七香ちゃん、俺まだまだ若いんだけど…
よし、それじゃあ七香ちゃんの掛け声が合図だぞ!」
「わかった!」
俺と退斗は、その場でぐっと構えた
「よーい…
どん!」
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「こんなにたくさん動くの、久しぶりだ…」
大きな木の下には、ブルーシートが広げられていた
「マスターすごい全力でしたね、バトミントンも、サッカーも」
「なんか、楽しくてついつい」
ドカッと座り込むと、七香ちゃんのは水を差しだしてくれた
「ああ…」
水を受け取りながらふと七香の顔を見た
木漏れ日をキラキラと浴びて、彼女の顔が照らされる
長いまつ毛から覗く瞳は、こちらをじっと見つめていた
「…きれいだ」
「え?」
「え…!!///
いや、水、ありがとう!!」
恥ずかしい、
恥ずかしすぎる…
一体俺は何を言ってるんだ…
ごまかすようにゴクゴク水を飲み込んだ
「マスターのおかげで、
退斗もすごくご機嫌ですよ?」
「…それは、良かった」
地面に手をついて、きょろきょろしている退斗が遠くに見える
虫でも探しているようだ
「なんだか…
幸せですねぇ」
あたたかい風に包まれた
七香の髪は優しくなびき
七香はそっと手でおさえた
「これが…」
幸せってやつか
