
All Arounder
第54章 You Asked For It
「あ、マスターよく見たら汗びっしょりじゃないですかぁ」
けたけたと笑いながら
七香はもっていたハンカチで俺の額の汗を拭った
その腕を
咄嗟に掴んでしまった
「…っ///」
「…///」
華奢な腕をしていた
手の中に、心地よくはまった
5秒?
10秒?
どれくらいその腕を離せなかったんだろう
「七香…」
「…///」
「…ちゃん!!
俺、実は手相見られるんだよ!!
知ってた!?」
120%苦し紛れの嘘をつく
ものすごい勢いで七香の手を開いてみせて
手のひらに視線を一点集中させる
なんと心臓の音がうるさかったことだろう
緊張と恥ずかしさで、背中を汗がつたっていくのがわかる
「これは!ほほう!いい手相だ!」
さらに顔に近づけて見る
「なんてすばらしい!きっと良いことが起こる…!こんなにはっきり見える子はなかなかいないぞ…!」
クス、クス
「え…」
その小さな笑い声に恐る恐る顔を上げた
そこには、頬を赤らめた彼女がいた
「インチキ占い師さん、
私の手相からは、どんなことが見えるんですか?///」
「…っ…こ…///」
もう手の中は見ていなかった
彼女の手を、強く握りしめていた
「この手相からは…七香ちゃんが幸せになれるってことがわかる…」
ただ彼女の目を見ていた
「きっと、七香ちゃんが幸せだと思える瞬間が、たくさん訪れる…具体的なことは、わからないけど…
諦めなければ、勉強も、お金も、大切な人も…
全部…」
自分が何を言っていたか
もうはっきり覚えてはない
ただ、彼女の瞳に吸い込まれていく
「…俺…」
