
All Arounder
第54章 You Asked For It
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相変わらず、タバコの煙は吐き出されるたびに空へと消えていく
少しひとりで、吸いすぎたな
大志たちも痺れを切らし始めているかもしれない
「ようし、お待たせ」
バタンと扉を閉めると、視線がマスターのもとへ集まった
「マスター長ぇよ!」
「すまない、ギャルに命を狙われるなんて非現実的な出来事のせいでショック受けてたんだ」
「それ絶対嘘だろ」
「さて、どこから話そうか。
淳司の家に遊びに行って、少し雑談したってとこまでだね」
マスターは頭をポリポリとかいた
そして井上の顔を見る
「退斗」
「ん?どした?」
「初めて話すけどさ、
俺、七香ちゃんに惚れてたんだわ」
「は!?」
井上の声が店中に響き渡る
「マスターが、退斗のお姉ちゃんを??」
「ああ」
マスターのニッコリと笑った顔に
井上は口に手をあてがった
「そ、そうだったのか…」
「やっぱり意外と気付かないもんなんだな」
「いや、なんだ…結局、ははは、両想いだったのかよ、もったいねぇ」
井上の笑顔には、どこか寂しさが紛れていた
しかしその言葉に、かえって頬を赤らめたのはマスターだった
「え???」
「「え????」」
『マスター、顔赤くなってる』
「おっさん照れてる場合じゃねぇよ!」
「いやいや、だって、え?
りょうおもひ?」
「七香がマスターのこと好きってーのは、前々から本人に聞いてたからな」
「うわ!ばか!やめろ!///」
「青春やなぁ…」
マスターはしゃがみ込むと、右手で顔を覆った
若者たちに、今向ける顔がない…
