All Arounder
第54章 You Asked For It
「七香さん…か…」
「…」
「お前の…本当に大事な人だったんだな」
「…すまない、こんな話を…」
「いや…」
淳司の顔に、陰りが差した
「少し…席を外すよ、待っていてくれ」
「…ああ」
空気は暗く、重たかった
淳司が部屋から出ていくと
また急に孤独感が押し寄せてきた
…淳司のやつ、どこに行ったんだろう
なんとなく部屋を眺める
じっとしていられず、立ち上がって部屋の中をうろうろとする
「…」
本棚の上に写真が飾ってある
淳司と、若い女性だ
おそらく亡くなった奥さんだろう
その写真の後ろに並べてある本
歴史や剣道、戦い方といった内容の本のコレクションが並んでいた
「…好きだなぁこういうの」
ふっと目を逸らそうとしたとき
タイトルのない一冊の本が目に入った
気になって手をかけようとしたとき
「お待たせっ」
「あ、ああ…」
ちょうど淳司が戻ってきた
「お、なんだ、興味ある本でもあったか?」
「いや…淳司の奥さんか?
この人…きれいな人だな」
「そりゃそうだ!
俺がほれ込んだ人なんだから」
誇らしげな顔をして、淳司は言った
「なぁ…見てみろこれ!」
「ん?」
「どうだ、じいさんから受け継いだ日本刀であーる」
淳司は背中に隠していた日本刀を高々と掲げた
「おお、すごい!
立派なもんだな…本物を見たのは初めてかもしれない」
「だろう!」
鞘に納められた日本刀は非常に艶やかで
大事に手入れされていると素人目でもわかった