All Arounder
第56章 Strong Women
…いつの間にお風呂あがったんだろ…
「姫、こっちおいで」
『…エクササイズ!
してただけだから!!』
「ご機嫌で踊ってるように見えたけど」
大志は自分の隣をぽんぽんと叩いて、姫を呼んだ
姫は小さい歩幅でそちらに近づいていった
大志の横まで到達すると、大志は姫の手をとった
『…///』
手を引かれるがまま、姫は大志の前で腰を下ろす
しかし床にお尻をつける前に、グッと抱きしめられる
「…いいにおい」
大志はゆっくり息を吐くと、姫の髪に顔をうずめてそのシャンプーの香りを堪能した
『…///』
姫は黙って大志の頭を撫でる
乾ききってないのか、髪はしっとりとしていた
すると大志は、髪から顔を離し、
姫の顎、そして頬に一度ずつキスをした
唇を内に巻いて恥ずかしそうな顔に、ドキドキと心臓が高鳴った
「今日さ…」
『…?』
大志は姫を膝に乗せたまま、口を開いた
「いろいろ、あったじゃん?」
『うん』
マスターの命を狙う有利香が現れたり
マスターの過去の話を聞いたり…
「なんだか、オレこのままじゃだめだなって思ったんだ」
『え?』
どうして?と、目を見て伝えた
「ん~、なんかこう…いや…」
『…?』
「その…自分が、弱ぇなって…思って」
姫は驚いた
オレは強いといつも言い放っている大志の口から
こんな言葉が出てこようとは…
「…でもだから、もっと…思った」
大志は姫の顔をじっと見ていた
「もっと姫を、守ってやれるようにならねぇと、って」
目は一切逸らさない
まっすぐな瞳だった
『大志は、いっつも守ってくれてるよ…?』
だから、あたしも大志を守れるようになりたいんだよ…
「…」
姫の、大志の頭を撫でる手は、とても優しかった
それを静かに受け入れる大志は
ちゅっと額に、唇を感じた
『とっても大事な人…』
「…っ」
たまらずもう一度
強く抱きしめた