一万回目のプロポーズ
第12章 思い出
荷物をまとめ、宿泊先から出発する
移動はもちろんバスで、ここでは俊司とは隣になれなかった
仕方ないよね
ふと後ろを覗くと、俊司と目が合い
お互いに笑顔を向けて、そこで繋がってるんだなと感じることができる
「明奈…大丈夫?」
香織が心配そうな顔をして、聞いてくれた
千尋にジュースを掛けられた件に関してだ
『平気だよ、きっつい香水より強力』
冗談めかして言うと、香織も少し笑ってくれた
バスが走り出して数十分
あたしたちはお土産ばかり扱っている、大きな建物の前に着いた
『広ーい』
「だね、明奈は何買うの…?」
と
香織があたしに尋ねてくれたんだけれど
あたしの目に映る香織は、途端に小さくなっていった
『あれ?』
それもそのはず
あたしの手は俊司に引っ張られていて
もうバスを降りようとしていたんだから