一万回目のプロポーズ
第13章 孤独かどうか
―――――
トン トン トン
『?』
理科の時間、隣から机を叩く音がしたので振り向いた
俊司はノートを立てて、それをあたしに見せて来る
"センセーの頭、今日は薄いね"
失笑してしまった
周りにその噴き出した音が聞こえていないか心配だったけれど
あたしもノートに言葉を書いた
"ヅラ、つけ忘れ?"
俊司はニンマリと笑ったあと、黒板に字を書き写す先生の頭を眺めた
そしてまたこっちを見て、くっくっくっと小さく笑った
…可愛い顔
ついあたしまで、顔が綻んでしまう
「じゃあ1番を竹村君、2番を笹川さんに答えてもらいましょうか」
『「えっ」』
笑ってたこと、ばれてたみたい
先生の顔は笑ってたけど、眉間がピクピク動いていた
「えーっと、O2+2H2→H2O」
俊司がサラっと答えたことに、先生は言葉に詰まる
あたしはもちろん、感心
「では笹川さん」
『…んと…んと…あれですよね、あのー…』
先生の顔が嬉しそうに笑った
「ちゃんとさっき説明したでしょう。
しっかり話を聞いてないからこうなるんです」
もういいから
と、あたしから視線を逸らす先生に、もちろんあたしは腹が立った