
一万回目のプロポーズ
第14章 かませ!
「おーっす」
『よーっす!』
俊司が向こうから来てくれた
や、嬉しいけど、普通に振る舞う自分
客席から飛び降りたいくらいなんだけど、手だけ振った
「ありがとなー来てくれて。今日どうやってきたの?」
『歩いてきたー』
「まじで!?結構遠くない?」
『そっか?今日は絶好のお散歩日和ですよ』
本当に、あたしの前にあるフェンスが邪魔だ
取っ払っちゃってほしいよ
「確かに、すっげー天気いいよな!
んじゃ俺、帰りはチャリ押して帰るわ!」
『え、いいよ、気ぃつかうなよー
どうせ疲れてるんだろうから、ちゃちゃっと帰ったら?』
「全く気ぃつかってねーわ!(笑)
それより、最後まで残ってろよ!試合後も監督の話とかあるけど、そんときも残ってろよ!」
ニカニカと笑う
俊司は本当に、嬉しそうに笑うから
『あいあいさー、じゃ、早く練習行ってこい!』
「ほいー」
また向こうへ走りだそうとする俊司
それを思わず止めたくなる
『あ、お腹空いてない!?』
「はー?」
呼びかけにしっかり振り向いてくれる
その時の表情ったら、なんかポカーンて情けない
『おにぎり、食べなくていい!?』
咄嗟に持ち上げた
袋に包んだ手作りのおにぎり
俊司は間を開けることなく返事してくれた
「試合おわったら全部もらうー!」
『///』
あたしは声が出せない
はにかんで、大きく何度も頷いて、手を振りながら見送った
