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一万回目のプロポーズ

第14章 かませ!




そしてまた鳴った笛の音



後半戦がスタートした



最初感じていた恥ずかしさは、いつの間にか消えていて



『俊司ー!いけー!!はしれーーー!!』



自分じゃ想像できないくらい叫んだ



応援して、応援して、時々こっちを見てくれるとあたしはまた元気をもらえた




『シュート決めろーーー!!!』

「何してんの」








え?







後ろを振り返った




上からあたしを見下ろしていたのは、千尋だった





途端に体が硬直する




金縛りにあったみたいに、自由が消えた






『…おはよ…』



ガチガチに固まった愛想笑い



千尋はずっと、無表情だった








まったく違う世界に飛んできたみたい





耳に入る歓声は、頭まで届かない


千尋の、聞いたことないような低い声だけがはっきりと刻まれる



早く試合をみたいのに



千尋から目を離せない




お願いだから、こっち来ないで…

せめて試合を最後まで見させて…




でもやっぱりだめだった




「何でここにいるのよ…」



千尋は階段をゆっくりと降りてくるとあたしの隣で足を止めた





「ついてきて」



『…試合を…』




「うるさいな!!」




千尋はまた、階段をのぼっていく



あたしは荷物をまとめると、もう一度だけコートを見て


千尋の後ろをついていった








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