一万回目のプロポーズ
第14章 かませ!
「ちょ…」
『試合、もうすぐ終わっちゃうよ。
今は、試合観に戻ろ?』
そればかり口から出た
千尋を怖がる気持ちも、千尋から逃げたがる気持ちも、消え失せていた
試合を最後まで見届けたい
そんな焦りばかりがあたしを駆り立てる
俊司がサッカーしてるとこを、見たい
その姿を見に来たのに
もうこうしているうちにも、俊司がシュートを決めているかもしれないのに…
「ちょーし乗んなよ!!!」
あたしは千尋の怒鳴り声にビクついた
「明奈は俊司の何でもないんでしょ!!?
それか何?浮気相手か何かなの!?」
千尋はズカズカと、あたしとの距離を詰める
「そっかーあたしが俊司の彼女なら、あんたは浮気相手かーなるほどねー。
すっごい納得、ほんと、羨ましいわ」
まだ言い返せない
千尋の口から出る言葉を、何でか全部受け止めたくなった
「そう、羨ましいんだ、ほんと、明奈っていつもいいとこ取りだもん。
意味わかんない!マジで意味わかんない!!」
肩を思い切り叩かれ
あたしは足を踏ん張らせる
「ムカつくよ、あんたムカつく、全部持ってく…あたしのもの、全部もってくじゃん!!」
『千尋、俊司のこと好きならちゃんと試合見たくないの!?』
「そればっかり!!」
一瞬目の前が真っ白になった
頬を、思い切りはたかれたんだ