一万回目のプロポーズ
第14章 かませ!
あたしは会場内に走り出した
けれど、千尋に服を引っ張られる
手加減なんて何もない
まるで命でもかけているかのように強い力だった
「ざけんなざけんなざけんな!!
絶対許さない!!許さない!!」
『許さなくていいからさっさと離して!!
邪魔すんな!!』
服を引っ張った
髪を掴んだ
暴言を吐いた
叩いた
殴った
蹴った
自分でも信じられないくらい、喧嘩した
よく、男の子が本気の喧嘩してるのを遠くから見ていた
痛そうだな
バカだな
いつもこれだけ感じていた
でも目の前には、本気で向かってくる千尋がいる
喧嘩したくないっていう気持ちと、負けたくないって気持ちがごちゃごちゃに混ざった
初めて人をこんなに叩いた
初めてだから、威力もへったくれもなかったと思う
それでも、こんなに本気になった
もうどっちも、涙でボロボロだった
あたしがどんな状態なのか、自分ではわからないけれど
千尋は服も汚れて、かすり傷もつけて
痛々しくて、とても見ていられなかった
人が通りすがっていたら、すぐに止められていたと思う
でもここには二人だけだった
「ひどいっ…さいてー…あんたなんてサイテー!!」
『千尋に言われたくないから!!』
最後にはどっちも座り込んで
言い争うことしかできなかった