一万回目のプロポーズ
第7章 夜の電話
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『―――それからずっと…それが続いたの…』
《…》
『教科書を捨てられた時もあったし…靴を隠されたこともあった…
トイレで水掛けられたり…
でも…1番…みんなの無視が怖かった…』
《…》
俊司は黙って
あたしの一方的な話を聞いていた
もっとぶちまけてしまいたい…
過去の傷をえぐっているのは分かってる
でも…
『それでやっと…6年生に進級して…虐め、なくなった』
《…》
『友達は減ったけど…』
《…ごめん》
『え?』
《気づいてやれなくて…ごめん》
あたしは無意識に、持っていた携帯を握り締めた
『俊司は…悪くないよ…?違うクラスだったんだもん…』
《んなもん…関係ない…》
『…』
《つらかったな…でも今は、ちゃんと友達もいるし、俺もいるからな?》
『…』
《…明奈…?》
『…』
《泣いてんの…?》
『…泣ぃてなぃ…』
あたしは次から次から落ちてくる涙を
音を立てないように拭った
《泣いてんだな…》
バレてたけど…
泣いてるって分かってるのに
今は落ち着いた、優しい声で話し掛けてくれるんだね…