テキストサイズ

CROW―二つの魂―

第2章 恋人

「急に来られるとはどうされたのですか?一言、 ご連絡下されば私(わたくし)もお出迎えする準備ぐらいしましたのに……」

玖郎を抱きしめ、その胸に顔を埋めていた雪は、 拗ねるように頬を膨れさせ、玖郎を見上げるよう に聞く。

「済まないな。急に時間が空いて、持て余したか ら、寄ってみたんだ」

「まぁ!雪は玖郎様の暇つぶしでございます か?」

そう言って雪は、更に頬を膨れさせる。

「はは、冗談だよ」

「もうっ!玖郎様の意地悪……」

こうして語り合い微笑む玖郎を見ると、今朝の夢 の大男と対峙した時のような、氷のように冷たい顔とは別人のようだ。

お互いのことを大事に、想っているのだろうなと 思う。

ふと、遠くに住んでいる幼なじみの顔が九郎の頭 に浮かんだ。

――――もうどれくらい会っていないだろう?

次の夏休みには会いたいよな……

バイトでもするか?――――

ストーリーメニュー

TOPTOPへ