憾み その3

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[作品説明]

 しかし、3ヶ月目に入った6月上旬。
「そこの席空いてる?」
 授業開始前、男に声を掛けられた。オレは真ん中の列の通路側に座り、右に二席空いていた。「はい」と返事をすると、男は「サンキュー」と言いながら連れ立っていた女と座った。
 隣に座った男の身なりをチラ見。平たく言えば、チャラい、といっても良いでしょう!
 やがて授業が始まったが、隣の男女はペチャクチャお喋り。
「あのセンコー、桃屋のキャラに似てね?」
「えー。マス夫さんじゃない?」
 おいおい。教授のお話を聞けや! そうは思いながらも、改めて教授の顔を見てみると、確かにどちらにも似ている。不覚にも「んぐ」と鼻で笑ってしまった。
「ね。似てるよねえ」
 鼻で笑った音を聞き逃さなかった男が訊いて来た。
「五分五分だね」
 そう答えながら今度は女をチラ見。ショートカットでボーイッチュな感じ。それにノリも良さそう、と判断しても良いでしょう!
 男の名前は舞田尚之。女は藤崎美登里(みどり、あだ名はミド)。予想した通り、舞田はチャラ男。ミドは誰とでも気さくに接し、ポジティブな性格だった。
 2人は同じ中学に通い、高校は別々だったが、大学で偶然再会した。学部・学科も同じで、恋愛映画であれば奇跡と演出される所だろうが、当時舞田には彼女がいた。
 舞田はオレとミドより一つ上で、一年浪人しての入学。ミドは中学時代少しやんちゃだったそうで、全日制の高校を拒否し、通信制高校に入学した。「別に不良じゃないから」とは言っていたが、アルバイトをしながら学校に通い、一念発起して大学に合格したのだから凄い。
 2人と出会った事で、オレの大学生活は一変……は過言。0・5変する。3人でカラオケに行き、踊りはしなかったがクラブにも行った。たまには別の所で遊ぼうと言うミドの提案で、ゴルフ練習場にも行った事がある。舞田とは日雇いのアルバイトもした。
 2人と行動を共にしていると、一つ一つが新鮮で、楽しい時を過ごせた。
 でも、時を重ねて2人には別の友達が出来、ミドにも彼氏が出来て、3人で遊ぶ事は少なくなって行った。オレは人見知りと社交性のなさから、2人以外に友達は増えなかったが、二人と関係が途絶えた訳ではなかったので、特に寂しいとは思わなかった。

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