憾み その11
連載中[作品説明]
10月初めの就業後。派遣会社の担当の人に呼ばれた。休憩室の隅の席に向かい合って座る。どんな話か、大体予測は出来た。
担当の人は徐に口を開く。
「中山さん。あなた精神疾患を抱えてるそうですね?」
「……はい」
派遣会社には、うつ病の事は伏せていた。
「それでですね、主任さんが言うには、中山さんには仕事が頼み辛いっていう声が上がっているそうなんです」
「……」
話によると、精神疾患を抱えている事がリーダーを通じて周囲に広がり、仕事上のミスも全て病気のせいだと、偏見を持たれてしまったらしい。理解してくれたように見えたのは、オレの錯覚。
「主任さんからは人をチェンジしてくれって言われています。ですので……ここの仕事は今日で終わりです」
担当の人の顔に悔しさが滲んでいた。立場上、スタッフを庇いたい気持ちを押し殺し、顧客の要望を迎合しなければならない。精神的苦痛となる仕事をさせてしまった事は申し訳なかった。
だが、それも然る事ながら、オレにとっては「戦力外通告」。今日で終わりって、労働基準法も無視か……。とは思ったが、「今月一杯です」と言われて、偏見を持たれている職場に明日からも出勤出来たか? 仕事を失うショックの中に、安心感が漂っていたのも事実。
「力になれなかった事は申し訳なく思います。ですが、日本はまだまだそういう国なんです」
担当の人は鼻から溜息を吐いた。
患者数が増えている現実とは裏腹に、周囲の目は冷ややかな現状……。それをまざまざと教えて頂いた。
翌日からは完全な無職。結局路頭に迷う結果となった。
担当の人は徐に口を開く。
「中山さん。あなた精神疾患を抱えてるそうですね?」
「……はい」
派遣会社には、うつ病の事は伏せていた。
「それでですね、主任さんが言うには、中山さんには仕事が頼み辛いっていう声が上がっているそうなんです」
「……」
話によると、精神疾患を抱えている事がリーダーを通じて周囲に広がり、仕事上のミスも全て病気のせいだと、偏見を持たれてしまったらしい。理解してくれたように見えたのは、オレの錯覚。
「主任さんからは人をチェンジしてくれって言われています。ですので……ここの仕事は今日で終わりです」
担当の人の顔に悔しさが滲んでいた。立場上、スタッフを庇いたい気持ちを押し殺し、顧客の要望を迎合しなければならない。精神的苦痛となる仕事をさせてしまった事は申し訳なかった。
だが、それも然る事ながら、オレにとっては「戦力外通告」。今日で終わりって、労働基準法も無視か……。とは思ったが、「今月一杯です」と言われて、偏見を持たれている職場に明日からも出勤出来たか? 仕事を失うショックの中に、安心感が漂っていたのも事実。
「力になれなかった事は申し訳なく思います。ですが、日本はまだまだそういう国なんです」
担当の人は鼻から溜息を吐いた。
患者数が増えている現実とは裏腹に、周囲の目は冷ややかな現状……。それをまざまざと教えて頂いた。
翌日からは完全な無職。結局路頭に迷う結果となった。
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