憾み その8
連載中[作品説明]
「皆大学生なんですけど、早稲田さんも学生ですか?」
「まあ、一応……」
明らかに気色ばんだ答え。
「もしかして、訊いちゃ失礼でした?」
神妙に言うと、早稲田は笑顔で「いや違うんです」と言いながら、素早く右手を振った。
「実は私達、働きながらアナウンススクールに通ってるんです」
「へえ。じゃあ、将来はアナウンサーに?」
「私は声優です。ナレーターとしても活動出来る、そんな声優を目指してるんですけどね」
早稲田の目には力が籠もっていた。
その他にも、早稲田は石川県の出身で、オレより一つ上である事。オレは日本史を専攻している事など、色々話をした。
「今大学は何年ですか?」
「4月で4年になりました」
「えっ!? 就活大変でしょう?」
「こんな時期に合コン!?」というような反応。正にその通りな訳で……。
「今勉強してる道には進みたくないんですか?」
「いや、そういう訳じゃないんですけど……」
痛い所を突かれ、歯切れの悪い返事しか出来なかった。今思い返すと、当時は志とか、就職の事とか、正直ボヤっとしていた。先の事に対する危機意識も乏しかったと思う。
ふと周りに目をやると、男女が連絡先を交換し合っていた。オレもこの人とコンタクトを取りたい! 別に付き合いたいとか、最終的な考えはなかった。只純粋に、早稲田との関係を続けたかった。
しかし、それまで連絡先を交換した経験があまりない為、どう切り出そうか迷い、咄嗟に舞田を出汁に使った。
「今日、あいつに誘われたんですよ」
「そうなんですか。なーんか軽そう」
「チャラいですよ。皆に連絡先訊くと思いますけど」
「服装からしてそうだと思った」
早稲田は笑いながら言った。チャンスだと思った。
「オレも連絡先訊いても良いですか?」
言った瞬間から、早過ぎる達成感に満ち溢れた。が、それは持って1、2秒で終わる。
「良いけど、用なくなるよ、絶対」
「良い」と言いながらも、教えてくれる素振りは全くない。二の句が継げず思案に暮れていると、「お二人さんちょっとごめん」と女性が後ろを通ろうとした。
早稲田は女性に「トイレ」と訊き、「うん」と返事をされると、「私も」と言って席を立ってしまった。
「まあ、一応……」
明らかに気色ばんだ答え。
「もしかして、訊いちゃ失礼でした?」
神妙に言うと、早稲田は笑顔で「いや違うんです」と言いながら、素早く右手を振った。
「実は私達、働きながらアナウンススクールに通ってるんです」
「へえ。じゃあ、将来はアナウンサーに?」
「私は声優です。ナレーターとしても活動出来る、そんな声優を目指してるんですけどね」
早稲田の目には力が籠もっていた。
その他にも、早稲田は石川県の出身で、オレより一つ上である事。オレは日本史を専攻している事など、色々話をした。
「今大学は何年ですか?」
「4月で4年になりました」
「えっ!? 就活大変でしょう?」
「こんな時期に合コン!?」というような反応。正にその通りな訳で……。
「今勉強してる道には進みたくないんですか?」
「いや、そういう訳じゃないんですけど……」
痛い所を突かれ、歯切れの悪い返事しか出来なかった。今思い返すと、当時は志とか、就職の事とか、正直ボヤっとしていた。先の事に対する危機意識も乏しかったと思う。
ふと周りに目をやると、男女が連絡先を交換し合っていた。オレもこの人とコンタクトを取りたい! 別に付き合いたいとか、最終的な考えはなかった。只純粋に、早稲田との関係を続けたかった。
しかし、それまで連絡先を交換した経験があまりない為、どう切り出そうか迷い、咄嗟に舞田を出汁に使った。
「今日、あいつに誘われたんですよ」
「そうなんですか。なーんか軽そう」
「チャラいですよ。皆に連絡先訊くと思いますけど」
「服装からしてそうだと思った」
早稲田は笑いながら言った。チャンスだと思った。
「オレも連絡先訊いても良いですか?」
言った瞬間から、早過ぎる達成感に満ち溢れた。が、それは持って1、2秒で終わる。
「良いけど、用なくなるよ、絶対」
「良い」と言いながらも、教えてくれる素振りは全くない。二の句が継げず思案に暮れていると、「お二人さんちょっとごめん」と女性が後ろを通ろうとした。
早稲田は女性に「トイレ」と訊き、「うん」と返事をされると、「私も」と言って席を立ってしまった。
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