テキストサイズ

ひねくれショタと変態大学生の平和的日常

第7章 それぞれの過去 二

「あの、あなたは?」

俺は、捕まったオッサン達が連れていかれ、落ち着いてきた頃に、助けてくれた男の人に聞いた。

「あ、俺? 俺は草風 蒼時(くさかぜ そうじ)って言うんだ。君は確か…本田 隼人君だったよね。よろしく。って言ってもさっきの今だからね。大丈夫かい? 君には本当に迷惑をかけた。ごめんな」

草風蒼時と名乗ったこの男は本当に申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

「いいですよ。別に……。結果、実質的に何かあった訳じゃないですから」

そんな顔で謝られたら怒れるわけねぇだろ。それに、こいつが悪い訳じゃないし……。逆に助けてもらった訳だしな。

「……君は、強いね」

一瞬ビックリされたあと、そんなことを言われた。

「そんなことはありませんよ。俺は弱い人間です。……ただ、あなたから謝られても困ると思ったからそう言ったんです。だってそうでしょう? 俺はあなたに何かされた訳じゃないし、あなたが俺に直接何かしたわけでもない。なら、あなたが謝る必要はない」

「……君は…いや、なんでもない。でも、たとえそうだとしても謝らしてくれ。俺が、俺自身が自分の中の罪から逃れるために…。本当に、すまなかった」

なるほどね。この人はやり手だ。自分のためにとは言いながら実際は俺に対して謝るための建前にしている。

「……そういうことでしたら…素直に受け取っておきます。けど、本当に心配は御無用です。俺は平気なんで」

この人の切実な想いは、俺にはなくて……まぶしい。

だから、この場から…この現実から抜け出したくて…子供のふりをして気付かないふりをした。

「そうか。そう言ってくれると助かるよ。ところで隼人君。ご両親とかは大丈夫? 心配とかしてない? なんなら俺が送ってくけど」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ