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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には

 一方の自分はどうだろう。外見が〝スカ〟の女は人生もやはりハズレくじを引くしかない運命なのだろうか? 三十を過ぎて、結婚どころか彼氏もいないし、恋バナの一つもないなんて、最低最悪の人生ではないか。
 恋も仕事も夢も、すべてがハズレだ。確かにN商事は有名企業だけれども、別に今の仕事がさして重要というわけでもない。勤続九年にして、さしたる功績もなく、失敗もなく、ただ日々の仕事を無難にこなしているだけだ。もとより、やり甲斐を感じているわけでもなかった。
 そこで、輝の脳裏にまた、ある光景がフラッシュ・バックする。
 蝉時雨が降る暑い夏の午後。大学の教室で投げつけられた、言葉。
―君には無理だ。
 高校二年の〝スカ女〟の言葉とともに、もう一つ思い出したくない出来事だ。

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