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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第4章 LessonⅣ 忍ぶれど

 もっと良心的に解釈すれば、輝の想いに気づけば、断らざるを得なくなるだろうから、敢えて知らないふりを通しているとも考えられた。
 輝は俄に鼓動が速くなるのを意識した。昨日と同じだ。撮影の日、ウェディングドレス姿でこの教会を背景に写真を撮った時、危うく転びそうになって、聡に抱き止められた。あの瞬間、心臓が煩いくらいに速くなり、彼に気づかれてしまうのではないかと不安に思ったほどだったのだ。
 今は、あのときよりもっと酷い。昨日はまだ聡への恋情をはっきりと自覚していなかった。でも、今は彼を好きだという自分の心を嫌になるくらい理解している。
 聡を好きだと自覚していながら、彼の匂いのするコートに身を包み、殆ど身体がぴったりとくっつくほどに身を寄せ合っているのはとても幸せなことではあるが、ある意味、拷問にも等しかった。

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