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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第5章 LessonⅤ キャッツ・アイにて~孤独なピアノ~

 名器とは、それだけではや一つの存在価値を有している。例えばストラディバリの銘を持つバイオリンなどがその最たる例といえよう。
 年月の重みを持ち、その自身の重みがかえってそのものの存在価値を高め、峻厳な山のように誇り高く気高い逸品。それこそが、まさに幾世紀にも渡って語り継がれる名器というものだ。
 年月がその人の価値を損なうことなく、かえって深みと魅力を増している―、その点では聡も同じだった。
 このピアノがどれだけの歳月を経ているものかまでは判らないが、確かに名器と呼ばれるにふさわしいだけの風格を備えているように見える。まるで凛然とした誇り高い貴婦人のようだ。

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