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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第5章 LessonⅤ キャッツ・アイにて~孤独なピアノ~

「おう、これは凄い」
 彼は早速、マフラーを自分の首に巻いている。ブラウンのマフラーには〝A〟と赤で刺繍が入っている。
「これを君が編んだの?」
「ええ、いかにもお手製って感じで、申し訳ないんだけどね」
「とんでもない。嬉しいよ、ありがとう」
 聡が心底嬉しげに笑っているのを見て、輝もまた心が弾んでくる。
 彼はしばらく輝の顔を見つめていた。輝は微笑み、また視線を窓の外に戻す。二人を乗せた観覧車はゆっくりと地上に向かって下降している最中だ。
 窓からは遊園地の各所に灯った明かりに照らされた雪が見える。純白の雪が蒼白い光に浮かび上がり、まるで本物の花が天空から降ってくるように見えた。

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